映画「ディアトロフ・インシデント(The Dyatlov Pass Incident)」感想

1959年、ロシアウラル山脈のディアトロフ峠で9人の登山家が謎の死を遂げた。2013年、アメリカの映画学科の学生グループがドキュメンタリー映画制作のためにディアトロフ峠に向かう。

「ディアトロフ・インシデント」は実在した未解決事件の調査に出かけた若者達の悲劇を描く。「トロール・ハンター」「クロース・エンカウンター 第4種接近遭遇」「エリア51」「As above so below」「UMA2014」「ファラオの呪い」など、考古学や史実に基づいたテーマが好きな人にはたまらない1本。

ふもとの村から雪山に入る様がテンポ良く描かれる前半では、都市伝説好きをニヤリとさせるシーンがちょこちょこ挟み込まれる。寒くて孤立したロシアの村の雰囲気がとても良く、アメリカ人丸出しの主人公達に冷たい視線を浴びせる村人の演技もなかなかリアル。ファウンドフッテージの醍醐味のひとつ、それはダラダラした前半をいかに楽しむか。前夜祭的なパーティーや送別会、たわいもない会話や恋愛のもつれのシーンで主人公たちに親近感を持てるか否かで後半に向けての没入感が変わるからだ。

事件の真相に近づく後半は、数あるファウンドフッテージ映画の中でも指折りの面白さ。旧ソ連が放棄した秘密基地にて遭遇する恐怖が、もったいぶることなくカメラに映し出されるからだ。そして最後にアッと驚く仕掛けが待っている。

本作を手がけたのはレニー・ハーリン。「クリフハンガー」「ダイハード2」「カットスロート・アイランド」など、洋画ファンであれば誰もが知っている名作を手がけたハリウッドの巨匠だ。大味な作風が得意な監督が、今さらなぜインディー色の強いホラーに手を出したのだろう?あまりに若々しくてエッジの効いた仕上がりとレニー・ハーリンが結びつかない、とても不思議な作品だ。見せるのがうまい監督の手腕のおかげで、ファウンドフッテージの割には安定したカメラワークでストーリーを見せてくれる。この手の映画に慣れてない人でも終始安心して楽しめる、ザ・エンターテイメントに仕上がっている。伏線の回収も見事で、リピート再生は必須。観客を置き去りにしない作りに熟年の業を感じる。

実在したと言われるディアトロフ峠の事件に関する日本語の情報は少ない。もしやブレアウィッチ事件のようなでっち上げでは?と疑ったが、海外には大量に情報があり、映画のための創作ではないことがあらためて分かった。劇中差し込まれる古い写真が本物だと思うとゾッとする。

Dyatlov Pass incident<wikipedia>
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Dyatlov_Pass_incident

Dyatlov Pass incident<gizmodo>

A Hiker Has Been Found Dead At Russia’s Infamous Dyatlov Pass

映画や小説など、あらゆるエンターテイメントのネタにされたディアトロフ峠事件。最近はPS4向けのホラーゲームまでもリリースされている。とても怖そうだ。

邦題:ディアトロフ・インシデント
原題:The Dyatlov Pass Incident / Devils pass
ポスター画像:全然ちがう。この作品に限っては日本版が一番かっこ良い。
構成:モキュメンタリー×POV
テーマ:都市伝説、陰謀、遭難、実験、UMA、廃墟
舞台:ロシア
カメラの数:2台
手ぶれ度:中
※ドキュメンタリー番組用の素材として撮影している体裁だが、後半はそれどころじゃない。「REC:」を彷彿とさせるショッキング展開。
製作年:2012年
監督:レニー・ハーリン
キャスト:ホリー・ゴス、マット・ストーキー、ルーク・オルブライト